英語で「もう一つの〜」「他の〜」と言いたいとき、another と the other のどちらを使えばいいのか迷った経験はありませんか?
どちらも「別の〜」という意味がありますが、使い方やニュアンスにははっきりとした違いがあります。この記事では、それぞれの使い方を例文つきで丁寧に解説し、実践的に使い分けられるようになることを目指します。
another の使い方・特徴
● 定義
another は「もう一つの」「別の」という意味で、不特定の追加の1つを指します。
数えられる名詞の単数形と一緒に使います。
● 使用場面
「他に1つある(けどどれかは特定しない)」「さらに1つ追加で欲しい」などの場面で使われます。
● 例文
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Can I have another cup of coffee?
もう一杯コーヒーをもらえますか? -
I need another pen. This one doesn’t work.
もう一本ペンが必要です。これは書けません。 -
Let’s wait for another 10 minutes.
もう10分待ちましょう。
the other の使い方・特徴
● 定義
the other は「もう一方の」「残りの(特定された)1つ」を意味します。
話し手も聞き手も何が残っているかを知っている場合に使います。
● 使用場面
2つのうちの一方をすでに取り上げていて、残ったもう一つを指すときに使います。
● 例文
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I have two brothers. One is a teacher, and the other is a doctor.
兄弟が2人います。一人は教師で、もう一人は医者です。 -
She took one book and left the other on the table.
彼女は一冊の本を取って、もう一冊を机に残しました。 -
I’ll take this seat, and you can have the other.
私はこの席に座るので、あなたはもう一つの席を使ってください。
another / the other + 形容詞の使い方
この組み合わせもよく使われます。意味の違いは本体の another / the other に準じます。
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He bought another expensive watch.
彼はまた別の高価な時計を買いました。
(他にもあって、その中の1つを特定せずに追加で買った) -
He lost one glove and couldn’t find the other black one.
彼は片方の手袋をなくして、もう片方の黒い手袋が見つかりませんでした。
(すでに片方の存在が前提にある)
用法比較表
比較項目 | another | the other |
---|---|---|
定義 | 追加の1つ(不特定) | 残りの1つ(特定) |
主な意味 | もう一つ、別の | もう一方、残りの |
よく使う文脈 | 新しい選択肢の提示、追加の要求 | 二者択一の残り、既知のものの指示 |
使用頻度 | 非常に高い | 高い |
例 | another cup, another chance | the other hand, the other side |
ジャンル別:後に続く語(活用例)
ジャンル | another | the other |
---|---|---|
金銭・経済 | another payment, another job | the other account, the other salary |
時間・数量 | another 5 minutes, another chance | the other day, the other half |
物理的なもの | another chair, another door | the other shoe, the other key |
抽象概念・感情 | another idea, another reason | the other feeling, the other opinion |
統計・ビジネス関連 | another option, another market | the other report, the other department |
混同しやすい理由と学習者アドバイス
日本語の「もう一つの」という訳語が、another と the other の両方に当てはまってしまうため、学習者は混乱しやすいのです。第二言語習得(SLA)の観点では、「不定」と「特定」の区別が曖昧な母語話者にとって、冠詞や限定の感覚をつかむのが難しいのが原因の一つです。
まずは「2つのうちの残り=the other」、「数ある中の別の1つ=another」と覚え、常に「何が話題に上がっているか」「聞き手がそれを知っているか」を意識すると混乱を防げます。
まとめと判断のコツ
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another は「ほかにあるかもしれない1つ」、the other は「すでに分かっている残りの1つ」。
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文脈で「2つのうちの1つ」なら the other、それ以外の追加なら another。
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例文でパターンを身体に染み込ませるのが習得の近道です。
使い分けのポイントは、「残りの1つかどうか」を自問することです。それがわかれば、迷わず正しい表現を選べます。